生理前の揺らぎは、弱さじゃない。プロゲステロンという優しさの話

プレコンセプションケア

命のバトンは、自分が想像するより前から始まっている。


自分が生まれるよりもずっと前、母の体の中で卵子は準備され、そのまた母の中にも、その種はすでに存在していた。


そう思うと、私たちは「今この瞬間だけの存在」ではなく、静かに受け継がれてきた流れの途中にいるのだと感じる。


世界がまだ、今ほど食べ物や医療に恵まれていなかった頃。


AIも情報もなく、もっと自然に近く、ある意味では原始的とも言える時代から、

妊娠の仕組みの原点はほとんど変わっていない。


環境は大きく変わったのに、私たちの身体だけは変わらず、命を迎える準備を続けている。


その健気さに、ときどき胸を打たれる。


排卵のあと、プロゲステロンというホルモンが分泌される。


妊娠を守るためのホルモンで、子宮内膜を整え、体温を少し上げ、水分や栄養を蓄える働きがある。


妊娠しているかどうかに関係なく、女性の身体は毎月、未来の命を想定して準備をしている。


誰に頼まれたわけでもなく、褒められるわけでもなく。

ただ静かに。

その働きは、どこか優しくて、そしてとても誠実だと私は思う。


ただ、その準備の過程で、身体や心に揺らぎが出ることがある。


眠気、だるさ、むくみ、食欲の変化、イライラや涙もろさ。

一般的にはPMSと呼ばれているものだ。


講座などでよく伝えているのは、ここを単なる異常として捉えなくてもいいということ。


もちろん辛さが強いときはケアが必要だし、医療の力を借りるのも大切。


でも「身体は何を守ろうとしているのか」という視点を持つだけで、感じ方は少し変わる。

理解は安心につながるからだ。


セルフケアの視点で言えば、この時期は頑張りすぎないことが何より大切。


睡眠をしっかりとること、血糖値を安定させる食事を意識すること、

身体を温めること、予定を詰め込みすぎないこと。


身体がブレーキをかけているときにアクセルを踏み続けると、不調はどうしても強く出る。


でも、リズムに寄り添うだけで楽になる人も多い。


そしてこれは、女性だけの話ではない。

パートナーにとっても、生理やホルモンの変化を知ることは関係性を穏やかにする。


「なんでそんなにイライラしているの?」ではなく、「今そういう時期なんだね」と思えるだけで、

お互いの安心感はずいぶん変わる。


正解の言葉よりも、理解と余白。それだけで救われる瞬間がある。


現代では、生理やPMSは「コントロールするもの」として語られがちだ。


もちろんケアできることは素晴らしいし、医療の進歩には本当に感謝している。


でも、それと同じくらい大切なのは、“理解すること”なのかもしれない。

身体の仕組みを知ること、性を知ることは、どこか生きづらさをほどいてくれる。


男女ともに生理への理解が深まった先には、もう少し思いやりのある社会が待っている気がする。


自分の身体を否定せずに過ごせること。

相手の揺らぎを自然に受け止められること。


それだけで、人はもっと安心して生きられるはずだ。


命のバトンがずっと続いてきたように、人と人との関係もまた、理解の積み重ねでつながっていく。


性を知ることは特別なことではなく、日々を生きやすくするための知恵のひとつ。


そしてその延長線上には、今より少し軽やかで、あたたかい未来が待っている。


PMSは、ただ辛いものではないのかもしれない。


身体が未来を想定して働いている、その静かなサイン。


少し立ち止まってほしい。 整えてほしい。 自分を大切にしてほしい。


そんなメッセージを、身体は毎月、静かに送り続けている。


もし、この揺らぎをひとりで抱えるのがしんどいときや、「自分の身体をもっと知りたい」と思ったときは、

安心して話せる場所を持つことも大切だと思っています。


私たち日本プレコンセプションケア協会でも、妊娠を考えている・いないに関わらず、

自分の身体やこれからの人生について一緒に整理できる機会をつくっています。


性や身体を知ることは、未来の妊娠のためだけじゃなく、今の自分を生きやすくすることにもつながるから。


そう思えたとき、自分の巡りと、人生そのものを、もう少し優しく抱きしめられる気がしている。


そしてその優しさはきっと、自分だけじゃなく、隣にいる人にも、

これから出会う命にも、静かにつながっていくのだと思う。


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